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【京都穴場】高台寺のすぐ隣、圓徳院で感じる“和”の時間

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京都を歩いていると、ふと足を止めたくなるような静けさに出会うことがある。
賑やかな祇園の通りから少し離れた場所に、そんな空間がひっそりと佇んでいた。
高台寺のすぐ隣、北政所ねねゆかりの塔頭「圓徳院」。
華やかな歴史の舞台裏にありながら、人の気配はまばらで、まるで時間が止まっているかのような不思議な場所。
今回は、そんな圓徳院を実際に訪れたときの様子を、写真とともに紹介していく。
観光地としては穴場かもしれないが、その魅力は一言では語れない奥深さがあった。

圓徳院について

圓徳院(えんとくいん)は、豊臣秀吉の正室・北政所ねねが、秀吉の死後に移り住み、晩年を静かに過ごした場所として知られている。
華やかな戦国時代の終焉を見届けた、まさに歴史の証人ともいえる場所である。

現在は、ねねが建立した高台寺の塔頭寺院のひとつであり、高台寺とともに歩んできた歴史を感じることができる。
高台寺のすぐ向かいに位置し、華やかな高台寺とはまた異なる、しっとりと落ち着いた雰囲気が魅力の寺院になっている。

中でも見どころのひとつが、国の名勝に指定されている「北庭」
これは、もともと伏見城に造られていた庭を移築したもので、桃山時代の庭園美をできる限り当時の姿のまま保存している貴重な空間である。
石組や苔、樹木の配置などにも、その時代の美意識が色濃く反映されている。

それでは、圓徳院の成り立ちや歴史的背景について、もう少し詳しく紹介していこうと思う。

高台寺塔頭 圓徳院の歴史
  • 1603
    ねねが時の朝廷より「高台院」の号を賜る

    これを機に、秀吉の菩提を弔う寺院の建立を懇願

  • 1606
    高台寺の完成

    康徳寺を移転して建立。
    同時に自身の居所と木下利房の茶室も建立。

  • 1624
    高台院の没年
  • 1632
    高台寺塔頭 圓徳院となる

    木下利房により、高台院の居所であった屋敷を「高台寺塔頭 圓徳院」と改められる。

  • 1789
    火災で一部の建物が焼失
  • 現在
    高台寺付近の観光地として名をはせる

次に、圓徳院の概要について説明する。

施設名高台寺塔頭 圓徳院
営業時間10:00-17:30
17:00最終受付
休業日公式HPでの記載は特になし
拝観料大人500円
中高生200円
小学生以下無料(5名につき1名の同伴者が必要)
共通拝観券3か所(高台寺・圓徳院・掌美術館)共通券
900円
駐車場高台寺と共通
圓徳院のみの場合は1時間無料
共通拝観券の場合は2時間無料

施設の概要は以下の通りである。
営業時間は他の寺院と比べて特別短いわけでも長いわけでもなく、平均的な印象を受けた。
公式サイトには所要時間の目安が30分と記載されているが、私の体感としては、20分もあれば一通り見て回ることができる

そのため、圓徳院単体での拝観ではやや物足りなさを感じる可能性がある。
圓徳院は高台寺の塔頭であり、立地的にもすぐ向かいに高台寺があるため、両方をあわせて拝観することで、満足度の高い時間が過ごせるだろう。

また、この寺院の書院には、アメリカン・エキスプレスが発行するゴールドカード以上の会員向けに提供されているラウンジ(休憩所)がある
一般公開とは別の空間で静かに休めるため、対象のカードを持っている場合は立ち寄ってみる価値がある。

このラウンジの体験についても、別の記事で詳しく紹介しているので、興味のある方はあわせて読んでいただきたい。

アクセス・行き方

圓徳院へのアクセス方法は、「徒歩」「公共交通機関」「車」の3つのパターンがあります。
それぞれの行き方を順番にご紹介しますので、旅のスタイルに合わせて参考にしてみてください。

アクセス方法所要時間
高台寺の駐車場と共通
京都南ICより約20分
公共交通機関「東山安井」停留所より徒歩7分
徒歩阪急「京都河原町駅」より約1.2㎞、17分ほど

車で行く場合

車で訪れる場合は、高台寺と共通の駐車場を利用することになる。
駐車場はかなり広く確保されており、収容台数も多いため、よほどの繁忙期や紅葉シーズンでもない限り、満車になることは少ないだろう。

ただし、駐車場までの道のりには注意が必要である。
周辺の道路は片側1車線の狭い道が多く、人通りも多いため、特に週末や観光シーズンには混雑しやすい。
地元の人やタクシーだけでなく、場合によっては観光バスとのすれ違いも多く、運転に不慣れな場合は通行にかなりのストレスを感じる可能性がある。

そのため、どうしても車で行く必要がある場合を除いては、公共交通機関や徒歩でのアクセスをおすすめしたい。
周辺には観光スポットが密集しており、歩いて巡るのにも適したエリアである。

なお、タクシーを利用する場合は、このエリアが非常に混雑しやすいため注意が必要である。
特に観光シーズンや週末は渋滞が発生しやすく、時間制運賃の場合は当初の想定よりも料金が高額になりやすい

また、周辺の道路は一方通行や道幅の狭い箇所も多く、タクシーが目的地付近で停車しづらいケースもある。
そのため、完全に門前まで乗り付けるというよりは、やや手前で降車して少し歩くことを前提にしておくとよいだろう。

とはいえ、大きな荷物を持っている場合や、足元に不安がある場合にはタクシーは便利な選択肢のひとつである。
事前に混雑状況やおおよその所要時間を把握しておくことで、よりスムーズに行動できるだろう。

公共交通機関を利用する場合

バスで訪れる場合は、主に以下の3つのルートが考えられる。

  • JR「京都駅」から:市バス206系統に乗車し、約15分
  • 京阪「祇園四条駅」から:市バス207系統で約5分
  • 阪急「京都河原町駅」から:同じく市バス207系統で約10分

いずれも運賃は一律230円(大人料金)で、市営バスのため乗車区間にかかわらず同額となっているのが特徴だ。

最寄りのバス停は「東山安井」
ここで下車し、そこから徒歩でおよそ7分ほどで圓徳院に到着する。
道中には「ねねの道」や高台寺などもあり、散策がてら歩くにはちょうどよい距離感である。

バスは観光シーズンや土日祝は混雑しやすく、祇園周辺では渋滞に巻き込まれる可能性も高いため、時間に余裕を持って行動するのがおすすめだ。

徒歩で行く場合

徒歩で行く場合は、阪急もしくは京阪の利用が推奨される。
JR「京都駅」からも歩くことは不可能ではないが、距離があり、時間もかなりかかる。
そのため、京都の街並みをじっくり楽しみたい方や、体力に自信のある方以外は、公共交通機関やタクシーを利用するほうが無難だろう。

阪急を利用する場合は「京都河原町駅」、京阪の場合は「祇園四条駅」で下車することになる。
両駅は比較的近いため、どちらを選んでも所要時間に大きな差はなく、圓徳院までは徒歩でおよそ15分程度で到着する。

この徒歩ルートでは、鴨川を渡り、祇園の街を通り抜けながら向かうこともできるため、移動そのものが観光の一部として楽しめるのも大きな魅力だ。
人の多さには注意が必要だが、景色を見ながらのんびり歩けるので、個人的にはもっともおすすめのアクセス方法だと感じている。

なお、徒歩での行き方については、別記事で写真付きで詳しく解説しているので、併せて参考にしてほしい。
一般拝観の場合は、石塀小路で曲がらずに、そのまま直進して小路を抜けると、スムーズに到着できる。

見どころ紹介

方丈

方丈では、主に3つの体験が用意されている。

ひとつ目は、枯山水の作成体験
これは小さな砂庭を用いて、自分だけの枯山水をつくるというもので、箱庭のような感覚に近い。
目の前には、南庭という圓徳院の見どころのひとつでもある実物の枯山水があるので、それを参考にしながら取り組めるのも大きなポイントだ。
初めは「どんな模様を描こうか」と戸惑うが、いざ始めてみると、意外と集中してしまい、気がつけば時間が経っていることもしばしば。
自然と心が静まり、雑念が消えていく感覚があり、この寺院を訪れた際にはぜひ体験しておきたい内容のひとつである。

枯山水作成の見本

ふたつ目は、五体投地の体験

五体投地の作法

これは仏教における最も深い礼拝方法で、頭・両肘・両膝の5点を地面につけて行う。
日本国内では、主に僧侶が行うものであり、一般に触れる機会はほとんどないが、圓徳院では誰でも体験できるように開放されている。
また、ヨガのポーズとして見たことがあるという人もいるかもしれない。
動きはシンプルだが、実際にやってみると、身体だけでなく気持ちも自然と引き締まる。
なお、御朱印はこの体験コーナーの一角に用意されており、自由に持ち帰ることができるのもポイントである。

五体投地とは頭と両ひじ両ひざを地につける仏教の拝礼│やり方や例文を解説

最後は写経体験
これは仏教の教えやお経を筆で書き写していくもので、自分自身の願いや目的に応じて内容を選べるようになっている。
たとえば、総合運や金運など、現代的な関心に寄り添ったテーマも用意されているので、宗教に馴染みのない人でも気軽に取り組みやすい。
写経を終えたものは奉納することもでき、静かな空間の中で黙々と筆を走らせる時間は、簡単に精神統一ができる貴重なひとときとなる。
個人的にも、この写経体験はとても気に入っている体験のひとつである。

このように、方丈では仏教や寺院にまつわる体験がいくつか用意されている。
どれも敷居は高くなく、初めてでも取り組みやすい内容となっているため、観光の合間に少し立ち止まり、自分と向き合う時間を持ちたいという人にはおすすめだ。

寺院というよりかは、「静かに自分と向き合える場所」としての印象が強く残った。

南庭

圓徳院の方丈に面して広がるのが、南庭と呼ばれる枯山水の庭園である。

規模としてはそれほど大きくなく、豪華絢爛な装飾が施されているわけでもないが、隅々まで丁寧に手入れされた落ち着いた空間となっている。
白砂の模様や石の配置には、どこか静かな気迫のようなものが感じられ、じっと眺めているだけで自然と心が整ってくる。
いわゆる“映える”ような派手さはないが、逆にそれがこの庭の魅力だと感じた。

ここの枯山水は、一見すると固定されたように見えるが、実は時期や行事などに応じて意図的に配置が変えられることがある。
そのため、一度訪れたことがある人でも、季節や節目ごとに再訪してみると、違った趣を楽しめるはずだ。

この南庭の監修には、かつて奈良国立文化財研究所に在籍し、日本庭園研究の第一人者として知られた故・森蘊博士の指導が大きく関わっている。
現在は庭師・北山安夫氏によって、その意志と美意識が受け継がれ、維持管理がなされている。

京都・東山 圓徳院:拝観

筆者が訪れた際には、ちょうど高台院(北政所ねね)の没後400年の遠忌にあたる特別な期間で、庭の構成がいつもとは異なる“特別仕様”となっていた。
庭石は左から順に、過去・現世・来世を象徴するように配置されており、静かに目を閉じると、時の流れに思いを馳せずにはいられなかった。

現在はこの特別展示は終了し、庭の構成は通常の姿に戻っているが、訪れるたびに違った表情を見せる南庭の魅力は変わらない。
どの季節に訪れても、きっとそのときならではの美しさと静寂に出会えるだろう。

長谷川等伯の作品

長谷川等伯(はせがわ とうはく、1539年 – 1610年)は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した日本の絵師で、狩野永徳らと並び桃山時代を代表する画人。牧谿や雪舟らの水墨画に影響を受け、金碧障壁画と水墨画の両方で独自の画風を確立した。​彼の作品は、日本美術史において重要な位置を占めている。

圓徳院には、長谷川等伯の作品がいくつか展示されているが、有名なものは、「山水図襖(重要文化財)」であろう。
この絵に関しては、次のようなエピソードがある。

等伯が51歳のとき、襖絵の制作を依頼したものの断られたため、和尚の留守中に一気に描き上げたという逸話が残っている。

​雲母刷りの桐花紋が施された唐紙に墨で描かれたこの作品は、雪舟らの影響を受けた水墨画で、静謐な冬景色が表現されている。
白地の桐花紋がまるで、雪が舞っているように見える。

北庭

圓徳院の最後にして、最大の見どころが、この北庭である。

圓徳院北庭

この庭園は、もともと豊臣秀吉の居城・伏見城の前庭として造られたもので、彼の正室である北政所ねねが圓徳院へ移り住む際に、伏見城から移築されたとされている。
現在も、安土桃山時代の様式をそのままに残しており、原型をほぼ崩すことなく保存されている点でも貴重な存在だ。

庭の規模は決して大きくなく、華やかな花木や池があるわけでもない。
だが、自然石だけで構成されたその簡潔な美しさが、かえって時代の風格を感じさせる。
約400年もの歳月を経て、今も変わらぬ姿で残っているという事実には、思わず感嘆の念を抱かずにはいられない。

そこに立つと、まるで時が止まったかのような静けさに包まれる。
訪問の最後に、ふと立ち止まってこの庭を眺める時間は、観光の喧騒を忘れさせてくれる、贅沢で穏やかなひとときとなるだろう。

行ってみた感想・おすすめポイント

実際に訪れてみて感じたのは、重要文化財や名勝を間近で観覧できるにもかかわらず、比較的空いていて、まさに“穴場”的な観光地だということだ。
周辺には高台寺や八坂神社といった有名スポットがあり、少し足を延ばせば清水寺もある。
これらの人気観光地を巡る合間に、ひと息つく感覚で訪れてみると、静かな時間を味わえてとても心地よい。

圓徳院は、向かいの高台寺のように建造物や文化財をじっくり見て回るというよりも、写経や枯山水の作成など、仏教の世界を体験として味わうことを重視している点が特徴的だ。
手を動かし、心を落ち着ける体験が中心なので、自然と雑念が消え、気がつくと集中している。
観るだけの観光では得られない感覚が、ここにはある。

特に印象的だったのは、2つの枯山水の庭。
どちらも過度な装飾はなく、非常にシンプルな構成になっている。なかでも北庭は、ほぼ自然石だけで構成されており、約400年前の姿をそのまま残しているという。
そこに座って庭を眺めていると、高台院(ねね)が晩年を過ごした当時の時間に、そっと触れているような感覚になる。

圓徳院は、派手さはないが、静けさの中に深い魅力を感じられる場所だった。
観光のついでではなく、静かな時間を求めて訪れる先として、強くおすすめしたい一寺である。

周辺のスポット

最後に、圓徳院周辺の観光施設についても簡単に紹介しておく。

ねねの道

「ねねの道」は、高台寺から圓徳院へと続く、石畳の美しい小径。
北政所ねねにちなんで名付けられたこの道は、情緒あふれる町家や茶屋が立ち並び、京都らしい風景を楽しめる散策スポットとして非常に人気である。
途中には、八坂神社や二年坂・三年坂、清水寺なども徒歩圏内にあり、京都観光の拠点としても便利なロケーションとなっています。静かで落ち着いた雰囲気が魅力。
道幅は広く、車の往来も周辺道路に比べて少ないので、歩きやすい。

ねねの道

高台寺

高台寺は、1606年に豊臣秀吉の正室・北政所(ねね)が、夫の菩提を弔うために建立した臨済宗建仁寺派の寺院。
圓徳院のすぐ向かいに位置し、共通拝観券もあるため、あわせて訪れることで、ねねの晩年の足跡をより深くたどることができる。

紅葉が目玉であり、あまり混雑していないのでおススメ。

紅葉の高台寺

八坂神社

圓徳院前にある「ねねの道」を北上すると、八坂神社がある。
この神社は祇園や河原町にもかなり近く、大勢の人でにぎわっている。
全国の祇園社の総本山であり、さまざまなご利益があるとされている。
毎年7月には、日本三大祭のひとつ「祇園祭」の舞台にもなり、多くの参拝者で賑わう。
いつか実際に見てみたいものである。

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